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NUism column vol.4
演劇モデル・エッセイスト 長井短さんがめぐるNU
2021.11.24

演劇を中心に活躍する俳優だけではなく、モデルやエッセイストとしても活躍する長井短さん。まだ知らない自分に出会うため、NU茶屋町とNU茶屋町プラスをめぐります。



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長井短(ながいみじか)1993年生まれ。俳優・モデルとして活躍する一方でエッセイストとしても活躍中。 主な出演作に、ドラマ「江戸モアゼル」「アンラッキーガール!」、 映画「賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット」、著書に「内緒にしといて」など。
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長井短(ながいみじか)1993年生まれ。俳優・モデルとして活躍する一方でエッセイストとしても活躍中。 主な出演作に、ドラマ「江戸モアゼル」「アンラッキーガール!」、 映画「賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット」、著書に「内緒にしといて」など。

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どうせ上半身しか映らないし、電車にもバスにも乗らないし、何を着てても問題ない。昨日と今日で同じ服を着てても誰にもバレやしないし、匂いだってしないんだから。別にいいじゃん別に別にって言い聞かせて楽ちん一点突破でリモートワークをこなしたけれど、これじゃあやっぱり元気が出なくて、そのうち私はバレないからこそアガる服を着たくなる。買い物に出かけるのはちょっとムズイから、ネットの海を泳ぎまくって、お気に入りの服を探す。可愛い!ポチ。好き!ポチ。あ〜〜とりあえず買っとこう!ポチ。届いた服は、当然私好みのものなんだけど、なんか超既視感っていうか、2年前の私みたいな服達で、ん?本当にこれが着たいんだろうかと不安になる。街に出かけないと、ゆっくり時間が止まっていく。流行とかの話じゃなくて、私は私の知らない私にもう随分長いこと出会えていなかったのだ。それって良くなくない?代謝悪くない?だから私は街に出る。知らない人から知らない服を買って、知らない私に出会うために。





自分好みを引き出してくれるネイルサロン――uno pulir

好きなショップを回るのもいいけれど、知らなさと出会う為にはそれじゃだめで、こういう時はショッピングモールに限る。NU茶屋町は9階建て、その向こうにあるNU茶屋町プラスは3階建ての広くて大きな建物で、この箱の中にどんな店が入っているのかを私は知らない。どこに行こう。入口付近で迷っているとそこにはネイルサロンがあって、私は自分のまっさらな爪を見つめる。せっかく外に出たんだから。今日はとことんおしゃれするぞって誓いを込めて、ジェルネイルをしてみる。


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吸い込まれるように入店した私に、ネイルサロンのお姉さんは「どんな爪にしたいですか?」と聞いてくれるけれど、それは私にもわからなくて、ていうかネイルサロンに入るのも初めてで身の振り方がわからない。フリーズした私にお姉さんは優しく「好きな色は?」と聞いてくれて、「緑が好きです」と答えた。好きな色を聞かれるのなんていつぶりだろう。その後もお姉さんは「これは好き?」とか「飾りを乗せたりもできますよ」って話しかけ続けてくれて、私はただそれに答え続ける。どんな爪にしたいかわからなかったはずなのに、話すたびに爪は可愛くなって、完成した爪はまさしく私好みだった。誰かと話すことは、自分の輪郭をはっきりさせる。


NU8404.jpg NU8451.jpg NU8445.jpg ジェルネイルコース/¥5,980〜 ハンドケア/¥2,750
※着用アイテム:本人私物



さよなら、苦手意識――Hemming shop

NU8529.jpg NU8557.jpg コート:New Round Collar Coat(Honnete)/¥50,600
トップス:SENSU KNIT PULLOVER(rus)/¥36,300
ワンピース:shoulder strap one piece(Hemming shop)/¥22,000
パンツ:Organic Cotton Rib Pants(THE HINOKI)/¥26,400
バッグ:beads bag(Used)/¥3,300

来た時より可愛くなっていることに興奮しながら次の店を探す。目に入ったのはHemming shopと書かれた真っ白い壁だった。白は私と遠い色で、だって私はすぐ服に醤油をつけるし汚い手のまま服に触れてしまうから。でも、今日の私は一味違う。なんてったって指先には綺麗な緑が宿っているのだ。汚さずに済む、今日の私ならできると信じて入店。そこに並ぶのは大切にされていることが一眼でわかる温かい洋服たちで、洋服から温度を感じるのは久しぶりだった。通販サイトでわかるのは服のサイズやデザインだけで、雰囲気まではわからない。そのせいで失敗した買い物がこの一年で何度もあった。


NU8567.jpg NU8578.jpg ワンピース:Night Dress(Used)/¥19,800
パンツ:NIGHT NIGHT SWEAT PANTS(SUKU HOME)/¥19,800

こんなに白い服を着るのはロンパース以来な気がしてちょっと恥ずかしいけど、着たまま店内を歩いているうちに白に慣れてくる。お姉さんは「可愛いですよ」って言ってくれて、そうだ、こういう言葉も通販じゃかけてもらえなかったもんな。誰も褒めてくれないから、私は確実に私が好きそうな服ばかり選んでポチポチしていたのだ。苦手だった白い服を着た私の後ろに、お姉さんがニコニコ立っていて、この思い出さえあれば明日からはもう少し、白を好きになれると思った。


NU8592.jpg ハット:PALOMA(MANTERO)/¥38,500


靴屋での全身コーデ?――Onitsuka Tiger

NU8621.jpg ※着用アイテム:本人私物

白を好きになれたら次は黒だ。ショーウィンドウ越しに黒が燦々と輝いていたのはオニツカタイガーで、想定外すぎる靴屋の登場に慌てるけれど、入ったのも何かの縁だ。せっかくだしと私はまたもや店員さんに声をかける。あれよあれよとおすすめが出てきて、気づくと私は全身着替えていた。


NU8651.jpg NU8696.jpg NU8680.jpg シューズ:TIGER GRACIA/¥25,300
ワンピース:WS DRESS/¥19,800

洋服もあるなんて知らなくて、驚きと同時に街に出ることの楽しさを思い出す。スマートフォンはとっても便利で、知りたい情報ほとんど全部にアクセスできるけど、知りたいことにしか辿り着けない。でも街は違う。知ることの無かったオニツカタイガーの新情報を仕入れた私はなんだか友達の意外な一面を知ったような心持ちになっていた。鏡に映る全身黒の自分はいつもより大人っぽく見えて、こういうのもいけるんじゃん私〜やるじゃん〜って心の中で自分を褒める。知らない私に出逢わせてくれた店員さんにお礼を言って、もっと知らない私を探しに店を出た。


NU8708.jpg NU8740.jpg シューズ:HMR PEAK TRAINER/¥19,800


使うほど馴染む革アイテムを選ぶなら――MOTHERHOUSE

NU8800.jpg ジャケット:Oxford Khadi Flare Coat(brown)/¥41,800
パンツ:Oxford Khadi Gaucho Pants(brown)/¥28,600
シャツ:150dt Khadi Pintuck Yoke Shirt(white)/¥17,600
バッグ:Emy S(anemone)/¥39,600

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ガラス越しに、美しい革製品が見える。色鮮やかで滑らかなバッグやお財布は完璧に大人っぽくて憧れてしまう。触れてみるとひんやりしていて、すべすべで、私の持ち物にはない繊細さだった。もう28歳だし、こういう素敵なものを持ち始めてもいいのでは?洋服もバッグも、少しきちんとしたい日にぴたりと寄り添ってくれそうで、私の生活にはこういう「きちんと」が欠けていたのだと気づいた。どれか買っちゃおうかなと店内を歩くと、ハガキと書かれたスペースが見える。


NU9059.jpg NU9047.jpg Kawa no Hagaki/¥3,300

「革のハガキ」だという。触れてみると、あぁこれは本当に革のハガキだ。それ以外に呼びようがない。フカフカの宛名面に、直接住所とメッセージを書き込んで、切手を貼って送るのだ。革に字を書いたことなんてもちろん無いし、っていうかハガキって素材なんでもよかったのかって衝撃もある。たった5文字の「革のハガキ」という言葉なのに、見た瞬間から驚きで忙しい。「なかなか会えない、大切なあの人へ」ポップを読むと家族や友達の顔が浮かぶ。テクノロジーを使いこなして、私たちはいつも連絡をとってるけど、でも、大切な人とはやっぱり、データじゃない形でもコミュニケーションを取りたい。大好きだから、不便な方法で好きだと伝えたい。それならついでに、この革のハガキの小さなポケットに入れるプレゼントも探してみよう。


NU8892.jpg NU8969.jpg NU9043.jpg ワンピース:Corduroy Fly Front Stand Collar OP(red)/¥39,600
ストール:Red shadow stole(red)/¥23,100
バッグ:Emy M(forest)/¥47,300


NU茶屋町とNU茶屋町プラスを行ったり来たりしながら、誰かに贈りたいものを探す。その中に、私の欲しいものも紛れ込む。良いものがあることもあれば、ないこともあって、時々感じる足りなさのようなものに、私はすごく安心する。ネットショップには足りないものなんてないけれど、「何もかもある」ことは、本当に「何もかもある」状態のことを指すんだろうか。NU茶屋町を歩いてみて感じたのは、あるかわからない好きなものを探すことの豊かさだ。ここには何もかもはない。でも、だから私は上へ下へ行ったり来たりを繰り返す。時々、店員さんに声をかけて、一人じゃ辿り着けない素敵さへの手がかりをもらう。そうして集めたヒントのおかげで、私は自分の知らない自分の魅力に気づく。今が好きになる。今が好き。ここにいる今が好きだ。

We look forward to your visit.